「野田浩二のしごと」 出版

 
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2019に他界した父、野田浩二の作品集が出来上がりました。本を発行するにあたり、全てを進めて下さった野澤編集工房の野澤好子さんのコメントを一部抜粋します。

野田浩二作品集『野田浩二のしごと』上梓に当たって❸

『野田浩二のしごと』の方向性を決定づけてくれたのは、一周忌に行われた『野田浩二の仕事展』での画家・母袋俊也氏の講演だった。この展覧会の企画は次男の農君が当たったが、彼はその後、東京方面の取材を一手に引き受けてくれている。兄の拓真君はデザインや色校での手間を惜しみなく引き受け、農君は取材活動に動くという具合だ。

展覧会の当日は東京が緊急事態ということもあり、講演はリモートで行われた。野田作品を画面に映し出しながらの母袋氏の解説は非常に具体的で、かつ適確で、今まで何となく惹かれていたことに対して根拠を示して頂けた気がした。正に目からウロコといった感があり、「なるほど、そうだったのか」と、野田作品への見方の面白さを改めて教えてもらった気がする。その講演内容をさらに補強して頂き、そのページを核に、ページ構成を行っていった。私の好みの問題も多分にあるが、母袋さんにより具体的に紐解いてもらうほどに、野田作品への興味が深まっていくのである。

実は野田さんと母袋さんは幼い頃から隣同士で育ち、しかも小・中・高と同窓生として青春を共にした。さらに母袋さんは画家としての顔と同時に、長年美大で教鞭を執られ、絵画や美術理論を研究されてきた方である。そんな野田作品を考察するに最もふさわしい人物が65年の生涯に亘り、常に横にいたのである。これは野田さんにとって、もう幸運としかいいようがない人生ではないか!

本を編集する上で当初から私の中には「野田さんは作家であろうとしたのか、職人であろうとしたのか」という疑問があったが、その問いに対しても母袋氏は一刀両断で答えている。

「野田は職人、アーティストのどちらをも目指したのではなく、自分自身であることを望み、目指した」というのだ。そして、その野田の姿勢こそが「一目で野田作品と見分けることが出来るオリジナリティ溢れる作品の誕生ともなった」と分析している。

野田さんは作品を作る上で「どこにも属さず」、ひとりひたすら染め続けてきた。しかし、工房展などでは一転、音楽と人の笑いの中にいた。

今回はそんな中で誕生した野田作品の一点一点を、ともすれば作品が散逸し、劣化する前に、本にとどめることを最大の目標に編集に着手した。もちろんご家族にとっては大切な遺稿集という意味もあり、今回は私的な資料も沢山ご提供いただき、一冊の本として完成した。

染織やデザインを仕事にしていこうとしている若い人に、工芸とは何かと考える人に、手を止めてみて頂けたら無上の喜びだ。

野田さんが亡くなって二年、野田さんの名前も知らない人が作品を通して野田さんに興味を持っていく。そんな場面に出会いたい。

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『野⽥浩⼆のしごと』

164 ⾴フルカラー B5変形版 2,200 円(税込)/限定 1000 部



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